見積もりFAQ 袋帯/名古屋帯
のしみ抜きクリーニング

帯を安くキレイにできる?

・アンティークの袋帯の汚れって安く洗ったりしてキレイにできますか?

・ちょうどお太鼓/タレ先のところに目立つ汚れがある。安くしみ抜きできないの?

2つの問い合わせメッセージは袋帯・名古屋帯のクリーニングご相談において、最初にいただくメッセージの代表例です。

ご相談をいただいた後、まず何をおいても説明すべきだと判断した内容がいくつかあります。

このぺーじでは袋帯・名古屋帯・丸帯などの帯のしみ抜きやクリーニング、丸洗いやみず洗いをご検討の方に目を通していただだくべく、着物クリーニングライフのお役に立てるようまとめた内容となっています。

帯はキレイにできない代表?

帯は安くキレイにしにくくて

当店独自見解です

帯にもいくつかのタイプがあります。そのうちクリーニングに届くもので多いのは袋帯と名古屋帯です。

そして現在流通している中で多数を占めるアンティーク・中古の袋帯と名古屋帯はクリーニングをあきらめられ、その後の帯人生をまっとうできず忘れ去られるという悲劇で幕を閉じているのが現実です。それはなぜなのでしょう?

あくまでも当店の独自見解です。当店へご相談いただく際は1にも2にもまず『安さありき』でのご相談が多く、結果としてあまりにも希望される費用とお見積料金が合わないためか、帯の注文はあまり多くありません。

着物文化の継続を下支えする役割の安くキレイにする係を自認する当店でもシンプルに帯の汚れを安くキレイにできる事は、着物に比べ非常に少ない結果となっています。

当店でのお見積額は確かに全国の着物・帯クリーニングの相場料金から見れば割安感はあります。ただ当店に日々お寄せいただくご相談の予算よりは割高になってしまう、このようなイメージでとらえていただくのが最もふさわしいと思います。

帯造りは洗う前提じゃない?

帯はそもそも洗う事を前提として作られてる?と、当店では疑問に感じています。

理由の第一は部分的にしみ抜きすると逆にしみ抜きした部分から意味不明の汚れ成分が浮き上がってくる事があるからです。

キレイにしたい、気になる汚れをキレイにしたいからクリーニングに出したら汚れて戻ってきたら? 許せる方はいらっしゃらないでしょう。

しみ抜きをする私どもも正直とまどうばかりです。「なんで?」と。

帯芯入り帯と帯芯無し帯

袋帯と名古屋帯。この帯には帯の中に芯地=帯芯と呼ばれる少し厚みを持った布地が縫い込まれている事がよくあります。

このうち帯芯入りのタイプでよく起こる現象がここまでご案内の『シミ抜きしたらシミ抜きした部分から逆に汚れ成分がにじみ出てきた』トラブルです。

帯芯が入っていないタイプの袋帯・名古屋帯でも刺繍ししゅうがある帯なら内部で余っている刺繍糸から何かしらの成分がにじみ出てくる事があります。ただし確率的には少ないほうです。

逆に帯芯入りタイプの帯は処置した部分がより汚くなってしまうトラブルの数が多いため、芯入りタイプの帯の染み抜きを扱う際は『中から汚れ成分が浮き出すだろう』との前提でお見積りを作成しています。これが帯のしみ抜きクリーニング料金を安くご提示できない主たる理由なのです。

補正はお客様負担

仮に帯芯の有無を問わず染み抜き処置・丸洗い処置・みず洗い処置を行った際に帯の中から何かしらの成分がにじみ出てきてクリーニングをご依頼いただいた時よりもヒドい状態になったとして、その補正は誰が受け持つでしょう?

補正処理自体は当然当店が行います。ただし補正そのものにかかる費用の負担は『お客さま負担』とさせていただいております。

理由は洗いや染み抜きなど、処置を始めて見なければどんなトラブルが起きるか予測できないからです。

サラッと書いてはいますがお客さまの立場で考えれば『ぐぬぬ』としか声が出ません。これも帯のクリーニングをためらわれる大きな理由だと考えています。

袋帯/名古屋帯のしみ抜き
クリーニング注意点

費用は1万円から?

帯のクリーニングについてはいくつか注意点がありますのでざっとご案内致します。

まずもっとも重要なのはここまでご案内の『内側からの汚れドバッ事件』がなければお安く済むものの、事件が発生すれば費用はうなぎのぼりとなってしまう点です。

当然処置前には事件が発生するかどうか見抜けません。そうなるとご相談いただいた回答へ『内側からの汚れドバッ事件』をさけ、事件が起きない方法でご案内するのが最善です。

そのため袋帯・名古屋帯の(特に帯芯入り)しみ抜きやクリーニングをご検討の際は、安いお店ではございますが最低1万円からとお考えいただくのが適切だとご案内しています。

以下、お見積りの例で具体的に説明いたします。

お見積もりの例

芯地がある帯 帯の表地の中、内側に芯があるものはシミ抜き・みず洗い時に芯の中に付着していた成分が表地ににじみ出し、結果としてクリーニングしたらより汚れの状態がヒドくなったりする事を覚悟する必要があります。

そのためお見積りを提供する際、大きく2つの手法でご案内させていただく事になります。

内側汚れドバッ前提

しみ抜きしたら、丸洗いしたら、みず洗いしたら内側から何かの汚れ成分が浮き出てくる ───これが起こるとの前提でのお見積りです。

例えば染み抜きを希望する部分が3ヵ所でその費用見積もりが3千円だったとします。

例)しみ抜き見積り3~7千円

1. しみ抜き成功→トラブル無し
 しみ抜き料金だけで済むため、お見積り通り3千円のお支払い

2. しみ抜き成功→内側ドバ発生→補正追加
 しみ抜き料金に加え内側からにじみ出てきた汚れ成分を除去する補正費用が発生、最高額7千円のご請求

3. しみ抜き成功→内側ドバ無し→補正追加→補正失敗
 補正が失敗しても不可抗力のため処置料金はそのままご請求、汚れが残っていても最高額7千円のご請求


いかがでしょう? サ・イ・ア・クの四文字が浮かびませんか?

この見積もりの場合、内側ドバッ事件が確実に無いと推測できるなら見積り料金は3千円のはずです。ただし事前に予測できないトラブルですのでトラブルが起こった際のリスクをとる意味で最大7千円になります。(見積もりが8千円~1.6万円なら1.6万円の支払いが現実のものになる可能性が・・・)

しかも最大の懸念はお見積りでご案内した最大料金7千円で済まない可能性を捨てられない点です。実際どう起きるかわからない内側ドバッ事件現象の補正費用は、お見積りでご案内した額よりももっとかかってしまう可能性があるのです。

これでは商業クリーニングとして提供するには非常に無責任と考え、「トラブルが起きても構わない、その時はあきらめる」とよほど強いご依頼でなければこの形のお見積りをご案内できかねてしまうのです。

内側汚れドバッ無し

商業クリーニング店側からの意見ですが、『内側汚れドバッ事件』は避けられるなら避けるべきです。そうなると処置方法は和裁込みでの方向となり、安全性を確保したシミ抜きクリーニングが最善となります。

これはしみ抜きなど特定の汚れをキレイにする際、みず洗いする際などに事前に芯地を抜き取り、処置後にもう一度芯地を入れる処置を加える手法で、実は着物のクリーニングの世界ではよく用いられる手法と言えます。

この手法の問題点は唯一、和裁費用が加わる分割高になるのは防げない点です。(しみ抜きや全体クリーニング料金以外に芯地を取り出す、縫い合わせるという和裁処置の費用)

『内側汚れドバッ事件前提お見積り』では作業が完了するまで『いくらかかるのだろう』という不安がつきまといます。

ですが和裁を含めた処置ならあらかじめ費用はほぼ確定していると言えます。『前提お見積り』に比べるとトラブルは少なく品質も安定する事が見込めます。問題は費用の点だけと言えます。

ベース的な費用としてざっと1万円は見ておく必要がある、その理由は和裁を含んだ処置だからです。その上に個別のしみ抜き料金がかかる、とお考えいただくのが適切だと考えているところです。

費用を抑えるコツ

和裁を含む処置をご希望の節はご自身で事前に芯地を抜き、その状態でご依頼いただく事で少しですが安くご利用いただけます。

また最終的にシミ抜きクリーニング納品後にご自身で芯地を入れ直す、という事でしたらしみ抜き料金だけ、クリーニング料金だけで済ませる事は可能です。和裁の心得がある方だけがお得にご利用できると言っても過言ではありません。

お知り合いやお近くの業者さまで安く受けてくれる方がいるなら、その手ももアリだと思います。

例)しみ抜き見積り1.3~1.8万円
和裁を省くと3~7千円の見積もり

内側汚れドバッ事件発生を少なく

1. しみ抜き成功→和裁込み
 しみ抜き料金+和裁料金で、お見積り通り1.3~1.8万円のお支払い

2. しみ抜き成功→和裁は自力で
 しみ抜き料金のみ、上記お見積りなら2~8千円程度のご請求で済む、1万円強の節約に成功

3. しみ抜き成功→和裁は他店で
 当店にはシミ抜き料金のみ(2を参照)、和裁は依頼した方・店へお支払い


結果を出してお支払いいただいた後、「利用して良かったな~」と感じていただけなければ当店から見てそのご利用は大失敗です。当然喜んでいただくべく力を注いだにも関わらず、です。

皆さまにお考えいただきたいのはクリーニングやシミ抜きの成功基準です。お店を利用した結果、どんな結果が届けば成功でしょう?どんな状態なら失敗でしょう?

実はしみ抜きの判定・ジャッジはオール・オア・ナッシング(カッコつけてしまいました)、「良かった!また利用しよ!」or「ゲゲッ!なんじゃこのデキは?失敗したー!」です。

「こんなもんか。まあ良しとしよう」or「ん~。なんとかガマンできるレベル・・・と、思わないと納得できないわねー」。

しかもこのジャッジはご利用になる皆さまおひとりずつで見方が異なります。

そこで当店としては「良かった!」と判断していただけるよう、袋帯・名古屋帯の染み抜きやクリーニング時には和裁込みの手法でのご利用をオススメしています。

ここまでを要約した言葉が「帯は安くキレイにしにくくて」なのです。
くどいようですがそれでも全国相場と比較すれば、十分安いと言えるのですが・・・。

帯芯の無い袋帯・名古屋帯は

刺繍ししゅうあり帯はやはり

芯地がない帯芯が無いタイプの袋帯・名古屋帯についても注意が必要です。

多くの袋帯・名古屋帯には刺繍があります。その刺繍糸の帯の内側にこもっていた何らかの成分がしみ抜きなどの処置により『元々なかったはずの汚れ』として出てくる可能性があるのです。

帯芯がないので和裁処置が必要ではありません。ただし着物に比べてトラブルは確率高く起こるのは事実です。

『帯の染み抜き、帯のクリーニングはトラブルが起きやすい。それを理解した上でクリーニングを検討する』

これが袋帯・名古屋帯・丸帯の染み抜き・クリーニングの鉄則、そうご理解いただければ幸いです。

袋帯/名古屋帯のしみ抜き
クリーニング時のポイント

クリーニングを思い立ったら

このページでご案内した内容はみず洗いのリスク説明ページ同様、非常にネガティブな内容と受け止められるかもしれません。

そこで最後に口直しとして、袋帯・名古屋帯・丸帯のしみ抜きやクリーニングについてシンプルな判断法をご案内いたします。

帯についてはある意味、『ある程度費用をかけてでもキレイにしたい帯』か『汚れをなんとかしないと使用できない帯』といった段階にあるもの以外、クリーニングした結果後悔する羽目にならないよう十分な事前検討が必要だと言えます。

非常に強い希望がある際は『内側汚れドバッ事件』が起こったら補正せずあきらめる、シミ抜きが成功したらラッキーと考えた上でご依頼いただく事は可能です。この点は皆さまの強いご希望次第です。

帯は着付けの際にどうしてもお太鼓部分やタレ先など微調整が必要で、手指・手の平の汚れが付着しやすいものです。大切にとっておきたい帯もたくさんあると思います。

ただ帯のしみ抜きやクリーニングについては他のページでご案内している『早めの処置』ですら『内側汚れドバッ事件』を否定できないため、帯のクリーニングについては独特のものだとご理解いただければこのページにも意義が生まれます。
※この注意書きはあくまでも当店でのクリーニング工法で生ずる問題です。他店の手法ではこのような問題はないかもしれません。

お見積り相談時の注意点

袋帯・名古屋帯のシミ抜きやクリーニングをご希望の際はこのページの内容をご理解の上でご相談を進めてくださればと思います。

特定部分の汚れだけをキレイにしたい場合でも、画像見積もりをご利用の際は下記情報を併せてお寄せ下さい。

1. 帯芯の有無
2. 汚れの原因・付着時期
3. 帯のお太鼓・タレ先・全体の柄付けがわかる全体画像
4. 個別の汚れが判定しやすい状態の画像
 ※撮影時は吊った状態ではなく床や机などに置いた状態で撮影下さい。吊った状態で撮影した画像は陰影が強く出て汚れがよくわからない案件があり二度手間になる場合があります。


 

全体を通じなかなかのネガティブっぽいご案内となってしまいました。その点お詫びいたします。

けして袋帯や名古屋帯のしみ抜き・クリーニングを否定するものではありません。できればご相談いただく全ての『帯の皆さま』を救ってさしあげたいのですが、どうしようもない費用の壁もございます。

そもそも法外な費用見積もりを提供する事はありませんので、ご案内したお見積りが多少割高でもご理解いただければ嬉しいです。

ご相談ご依頼の節は、よろしくご検討くださいますようお願いいたします。

きもの医のホームページをご覧くださりありがとうございました。
m(_ _)m