かけえりの筋状汚れ除去料金
無料画像見積もり回答まとめ

見ただけでは判別しにくい汚れ

 ※言及しておりませんが、そで口内側の腕とコスれてできる皮脂汚れも同じです。

幅1cm、長さ10cmの筋っぽい汚れがえりの左右両方にあります。染み抜きクリーニング費用はいくらくらいかかりますか?

このページをご覧になっている方も同じようなご相談をいただいた方だと思います。ただ上記のようなご相談では回答が出てきません。料金を計算するのに必要な情報が不足しているのです。

上記のような情報と画像しか無ければ、画像による無料の(仮)見積もり提供の回答は次のようなものになってしまいます。

ざっくり1,700円~14,000円までだと思います。

こんなお見積り、許せるでしょうか?1万数千円も幅があります。「バカにしているのか?」とお怒りの方がいらっしゃるかもしれません。ところが、全然そうではないのです。

かけえりの筋状汚れは非常によくできがちな汚れで、着物の汚れの中でもっとも多いものだと思います。だって1度でもそでを通すとできてしまう汚れなのですから。

それだけにその処置の費用がどれくらいになるかは気になるところだと思います。

私どもとしましてもできるだけわかりやすいご案内を心がけておりますがこの節のタイトルにあるように「見ただけでは判別しにくい汚れ」で費用見積もりがなかなか難しい汚れの、代表でもあるのです。


2020年後半より掛衿かけえり交換による変色の解決がより格安料金でご利用いただけるようになりました。もちろん身巾調整から身丈調整などのお直しも超格安化!詳しくは下記をご参照くださいませ。

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料金算出の考え方

かけえりの筋状汚れとそで口内側にできる皮脂汚れはその他の汚れとは違い、ざっくり3段階の状態に分類できます。

3つの状態に即して処理内容が決まり、そして料金見積もりが算出できます。まずこの点をご理解下さい。

  1. 数日前に着た時にできた筋状汚れ
  2. 数年前にできていた筋状汚れ
  3. できた時期不明の黄色・茶色の筋状汚れ

それぞれについて簡単にご案内していきます。

数日前の汚れ

見極め方(情報の提供の仕方)は簡単です。数日前に着る前、その汚れがあったかなかったか? これがわかればお見積りする必要性がグッと下がるくらい簡単に判断できます。ご自身でも判断できる確率が高まります。

1.着る前は確実に汚れは無かった

この場合、『その数日前の着用』でできた汚れと考えるのが合理的です。えり洗いで処置できる可能性が大です。早く処置すれば早いほどキレイに取れる確率が高まります。

えり洗い、または丸洗い振袖はこちら留袖はこちら)で安く解決するにはスピード感が重要です。

注意ポイント

汚れの形に注意して見てみましょう。かけえりにできる汚れのほとんどは皮脂汚れ・ファンデーション汚れです。お召しの際の動きで首にコスれてできる汚れです。

ですので典型的な汚れ方は『直線的な』『1cm程度の少し幅のある』『10cm前後程度の長さ』が基本で、『さらに汚れのトーンは一定』です。ファンデーションをサーッと肌に塗りつけたような、ベタ一面同じトーンの汚れとなります。

汚れの形が例えば丸っぽかったり、筋・線状につながってなかったり、汚れの中程は薄く汚れのフチは濃い色になっているような場合は皮脂・ファンデーション以外の汚れ成分である場合が考えられます。

このような場合は染み抜きや変色処理を伴う処置を行わなければキレイにする事はできません。それらの汚れ成分の原因物質はえり洗いだけでは除去できないからです。

「注意して着てたのにいつのまに汚れが?」このようなケースはよくあります。皆さまができる処置としてはお召しの前にかけえりに汚れがないか確かめる事が最善です。

ご自身でベンジンやエリモト・リグロインなどで処置する場合も同様です。着る前になかった汚れが筋状で一定の色目トーンなら、これらの薬剤でも簡単に落とせると思います。

数日前にあったかどうかわからない

この場合は次項のしみ抜きや変色処理の可能性が高くなります。えり洗いで処理できるかもしれませんし、しみ抜きなどの処置が必要になるかもしれません。

2.数年前にできていた汚れ

「最後に着たのは数年前。その時にできた汚れかその前からあった汚れかはわからない」

このような場合、皮脂汚れ・ファンデーション汚れまたはその他の成分の汚れがすでに『しみ化』し、えり洗いや丸洗いではキレイにできない可能性が5割を越えます。

えり洗いでキレイにできない汚れはシミです。つまり染み抜き処置が必要となるため、本当に必要となる費用は実際に着物をお預かり後、テスト処置をしなければ出てきません。

つまり画像や情報を元にした(仮)見積もりは、実はこれまでの経験値から推察したある程度ざっくりとした費用見積もりとなります。

えり洗い・丸洗いで落ちない程度で完全に変色に至っていないかけえり汚れは、ざっと数千円~1万数千円までと費用に幅が出ます。

ただそれでは「画像見積もりで最大5,000円と提示されたから実際に着物を送ったら1万円必要と言われる」リスクを回避できません。

そのため当店の画像・情報による(仮)見積もりの内容の金額提示は、『最低額~最高額』のように幅をもった内容となっています。

数年前にできた皮脂・ファンデーション汚れなら、変色が進んでなければ実際にえり洗い(丸洗い)で解決できる事も少ないながらもございます。これはお客様が求める品質=投じる費用により変化いたします。

ざっくり言えばお金をかけるほどキレイにできる点数、例えば100点満点の100点品質が得られやすく、○○円までと制限があれば100点にはしにくい、とご理解いただいても良いと思います。

実際に着物をお召しになる時は筋状汚れになっている部分を折れ線に内側に折り込んで着付けます。広げたら気になる筋状汚れも着た時は「それほど目立たない」事はよくあると思います。

ご利用の際にはクリーニングの希望額と合わせ、必要な品質にも言及していただければより精密なお見積りが可能です。

注意ポイント

皮脂汚れ・ファンデーション汚れはえり洗いなどのごく簡単な処置で落とせる汚れの代表です。ところが時間の経過とともに(衝撃情報です)変色を伴ったシミへと変化し、最終的には完全に変色じみとなります。

皮脂汚れは他の汚れと少し異なり、皮脂が布地にただ単に付着しているだけの状況の次に、すぐに変色が始まる『放置するのは危険』な汚れのひとつです。

大事にしたい着物、キレイを維持してヘビロテしたい着物はご自身でベンジンなどで行うえり拭きを習慣化されるか、面倒でお金もかかるものの目について気になったら早めに着物専門クリーニング店へ出すのが最善の策です。

変色の進み方です。『初期は薄い黄色→しっかりした黄色→赤みがかった黄色→茶色→こげ茶→穴が空く』

詳細は次項で紹介しますが、正直着物染み抜きクリーニングのプロでも『見ただけで皮脂・ファンデーション汚れか、しみ化しているか、変色しているか』の判定はよほど典型的な症状を呈していない限り、難しいものです。

前項同様、ぜひ着物をお召しの前に汚れチェックを習慣化し、着物ノートを作って記録しておきましょう。この情報は、着物をクリーニングに出す時に非常に効果的な働きとなり、皆さまのお財布の門番として活躍してくれるのは言うまでもありません。

もうひとつ前項同様、キレイにしておきたい着物の汚れを処置するのに時間がかかるのはノーグッドです。早めの処置なら数千円くらいでキレイにできる汚れが大半です。

ぜひ勇気を持って『キレイにしておきたい着物』は早めのクリーニング処置を心がけましょう。


アンティーク着物なので時期・原因も不明

この場合は次項の変色処理・柄足し処置・かけえり付け替えなどの処置が必須、とお考えになるのがより良い結果につながると思います。

仮に変色していれば、えり洗い・丸洗い・シミ抜きでは一切汚れがきれいにならない事が十分に考えられるのです。

3.いつできたの?(TヘT)汚れ

「『中古』マークのアンティーク着物を買ったら」、「『未使用品』マークの新古品着物なのに」、「『美品』にダマサれた~っ!」

このような状況の汚れは前項・前々項、そしてこの項目の変色、いずれのケースも想定内となる汚れです。

残念ながら3千円~8千円では解決できない可能性が十分に考えられる状態です。なにせ情報がありません。実際にお預かりしてテスト処置を行わねば、私どもも正確な見積もり提供がかなわないのです。

 ───ただし『クリーニング・しみぬきでの解決』にこだわらなければ、6,300円で解決できるチャンスは多くの着物に残されています。

単なる皮脂汚れ・ファンデーション汚れの状態で、えり洗い丸洗いで処置できたり、
 染み抜き処置で若干変色が残っているものの『ナントカ着れそう』なレベルで納品できたり、
 最終手段の変色処理・柄足し・かけえり付け替えでしか乗り切れなかった ───

これら『3つの状態の中でもっとも費用がかかる処置まで』お覚悟いただき、その上でクリーニングを検討する必要があります。

私どもも商売ですので、例えば掛襟かけえりの筋状汚れの染み抜き料金の希望額として「3千円まででキレイにしたい」とご相談を受けましても、「いつできたのかわからない筋状汚れ」につきましては3千円まででキレイにできるかもしれませんし、最悪1万円を超える事も考えられます、とお茶をニゴす訳けにはまいりません。

これはお客さま側も同様で、よくある中古品・アンティーク着物を購入したら元々あったかけえりの筋状汚れの際は、3千円程度では落とせない可能性が大きい、とご理解いただく必要がございます。

そこで希望額問題です。結局いくらかけられるか?という部分に集約されます。

当店の回答としては、一部のかけえりにまで柄つながりのある訪問着を除き、安定した品質・お召しの際に筋状汚れが完全に隠す事を比較的安価に処理できる、かけえり付け替えをひとつの目安としています。

画像による(仮)見積もり 例)
  1. えり洗い(丸洗い)でキレイにできた場合
  2. しみ抜きでキレイにできた場合
  3. 変色処理・柄足し・かけえり付け替えしか方法がない場合

1. えり洗い(丸洗い)でキレイにできれば、仮にお見積りの時点で提示した料金が4,800~9,000円だとしても、ご請求料金はえり洗い(丸洗い)料金で収まります。非常にラッキーなケースです。激レアというほどもなく、少なからず起こる現象です。

2. しみ抜きでキレイにできた場合、という場合の多くは筋状汚れではなく丸や楕円、しみの内側が薄くフチが濃色のシミ、食べこぼしなどになるでしょう。この場合もお見積料金の範囲の中で適切な料金請求となります。

3. 変色処理・柄足し・かけえり付け替えしか方法がない場合、6,300円の打ち止め料金がオススメ。

要は実際に着物をお召しになる時に、今ある筋状汚れが『見えなければ良し』との割り切りができれば、かけえり付け替えでの処置は超ベストな選択です。

着てしまえば、誰の目からもバレないのですから。それが6,300円で手に入ります(2019年8月現在の料金表より)。誰にも汚れが見えなくなる=完全品質です。完全品質が6,300円です。
 ※実は本来、当店としましては自社処理できるクリーニング工法での処置(染み抜き・えり洗い・丸洗い・変色処理・柄足し)が本業です。和裁はプロの工房へ完全委託しており、なおかつ当店のマージンはほんのわずかしか載せていないため、実のところかけえり付け替えでの処置は悲しいのですが・・・

かけえり付け替えは着物の伝統にのっとった正式なお手入れ法で、着物が生まれてすぐに取り入れられた正に日本古来の文化の継承とも言えます。

着物を干したりたたんで保管してたり、陰干しで広げた時には『付け替えた部分』やかけえりと『取り替えた』部分の筋状汚れは目に入ります。でもでも、着れば誰にもわかりません。

しかもお手入れ費用としてはしみ抜きや変色処理・柄足しよりも安く済むケースが圧倒しています。

もし変色処理での処置をご希望なら、変色処理に用いる唯一の変色復元剤である漂白剤の副作用を頭に置かねばなりません。漂白剤は着物の染色を簡単にはがしてしまい、脱色させてしまうという服効能を。

100%脱色するとは言い切れないものの、非常に多くの着物の正絹地は漂白剤により脱色を起こすのは着物専門クリーニング店なら誰もが知る周知の技術的な事実です。

脱色すると部分染め=染色補正の処置をセットで考えねばならないので、結果的に変色処置での費用見積もりは高額となります。シミ抜き+変色処理+部分染めの3工程分の費用が発生するのですから。

部分染めも小さな脱色なら成功例が多いものの、大きな範囲に処置する場合は少々違和感が出る事もあり、最善の処置法だとは言えない、と当店では考えています。
 ※例えば変色、との見立てで変色処理まで含めたお見積りの際、しみ抜きでキレイにできたら2,800~5,400円、変色処理だけならその倍、部分染めまで加えると私どもの感覚で言う『天地がひっくり返るごとくのクリーニング代金』の見積もり提供そしてご請求となるのは、着物文化を下支えする係の中でも『着物の汚れを安くキレイにする店』としての立場がありません。かけえり付け替えなら当店の利益はわずかでも費用も安く抑えられ、捨てられる運命だったかもしれない着物さまの着物としての価値も延命でき、願ったり叶ったりなのです。

くどいようですが画像による無料お見積りをご利用の際、ぜひクリーニングの希望額と合わせ、必要な品質にも言及してください。

注意(・・・とは言えない)ポイント

かけえり付け替えについてもう少し深堀りしてみます。かけえり付け替えは回数を重ねられる着物で2~3回が限度です。

多くの着物では4回以上は一般的な手法では処置できないと思います。

ですがよく考えてみて下さい。かけえり付け替えが必須の着物はすでに変色しきっていてクリーニングでキレイにしようとすると高額だったり品質に若干不安があるからこその、かけえり付け替えしかない、という流れです。最終兵器です。

その最終兵器であるかけえり付け替えが2~3回できるという事は裏を返せば、クリーニングに出さずほったらかしにして変色させてしまう事件を、3回くらい繰り返せるのです。当然毎シーズンお召しになったとして、最低でも5年10年はかかるでしょう。

そこまで繰り返し処置してもらえた着物さまは、着物としての自分自身の価値評価に震えわななき、持ち主に精一杯の感謝を送ってくれる事だと思います。着物冥利みょうりに尽きる、ってヤツです。

かけえりについては変色を起こさせても2回くらいはなんとかできるチャンスがあります。

二人で映画1.5回分、和牛ステーキ肉一人前3回分、マクドナルドランチ10回分・・・新しいぞうりや帯揚げ伊達締め半えりを少しガマンすれば、かけえり付け替えで気分良く着物が生まれ変われます。

幾多の苦節を乗り越え皆さまのお手元にたどりついたかわいいかわいい着物さまを、ぜひ可愛がっていただければ(そのお手入れを請け負って生活する私どもも安泰・・・い、いいいぇ、)幸いです。

繰り返しの情報発信です。『キレイにしておきたい着物』は早めのクリーニング処置を心がけましょう。これを呪文のように心がければ、少なくともコスパの点では満足に繋がりやすいはずと、当店では信じています。

 

着物専門クリーニング店の提案

最後に余計な情報発信をひとつ。

「もーっ!! ○○日後に着たいのにーっ!」 このようにお急ぎでかけえりの筋状汚れを解決せねば!とオアセリの皆さま、落ち着いて聞いて下さい。

先にも触れたとおり、かけえりは取り外して付け替えたり取り外して個別で洗ったりして再び取り付けて使い回す重要なパーツです。でも実は、なくても大丈夫なのです。

着物の事や伝統をより深くご存じの方ほど、かけえりがなくても「あら? かけえりが無い。ふ~ん。文化を知っている方なのね」と共感・感心を得られるでしょう。(あくまでも想像です)

そう。着る日まで時間が無い時は一旦、縫い糸を切ってかけえりだけを取り外してしまいましょう。大丈夫です。着物の伝統的手法で縫い上げられた着物なら、必ずかけえりだけを取り外せます。

自信のない方は手先の器用な方や家族友人知人を頼るか、ダイソー・セリア・キャンドゥなどの百均ショップで『糸切りリッパー』を購入すれば、案外簡単に取り外せます。(自己責任です。注意してゆっくり進めて下さい)

で、急場をしのいだ後は取り外したかけえりの汚れを処理するかどうか、時間をかけて落ち着いて検討すれば問題解決の目が見えてくるでしょう。

当店では特急仕上げコースも展開しております。ただ本当に急場で処置が必須だ!な着物でなければ、特急料金という名のムダな出費がかさんでしまいます。

『着物にはぁ~~~』との概念にとらわれず、大事なパーティーに着ていくドレスのファスナー横に少し破れが見つかった時に安全ピンやガムテープでなんとか乗り切った経験を思い出しましょう。

着物はぁ~、と構えなければ、着物とて単なるファッションアイテム、衣類の一種なのですから。

しかも、です。

せっかくかけえり1枚きりにした訳ですから、もうひとつ重大なチャンスが生まれました。ベンジン/エリモト/リグロインなどで自力でエリ拭キし、皮脂汚れ・ファンデーション汚れを解決できるチャンスが。

えり拭きはコツをつかめば「なぁ~んだ」と拍子抜けするくらい、簡単な処置です。ニモカカワラズ、昨日今日できたかけえりの皮脂・ファンデーション汚れくらいならおもしろいほど良く落ちます。(汗や食べこぼし他、水が含まれる汚れには一切効果がありません)

着付け教室やお茶お花、日本舞踊など、着物のベテランさんがいらっしゃる教室やサークルには少なからず自力えり拭きチャレンジした方が・・・。ぜひ探し当てて情報交換なり教えを請うなりお役立ていただければ幸いです。

 ───もちろん、失敗した時はぜひ当店へも相見積で結構ですのでご相談いただければウレしく思います。

これら揮発性の薬剤は使用法を守り、必ず通気性が良く火の元が無い場所でできればドライヤーを用いず、落ち着いてお取り扱いください。何が起きても、完全に自己責任を問われてしまいます。

あとがき

・・・最後の節で余計な自力えりふき話で長くなってしまいました。申し訳ありません。

以上が『かけえり筋状汚れ』のご相談時の根掘り葉掘りの補足情報となります。

最後まで読み進めてくださってありがとうございました。

きもの医のホームページをご覧くださりありがとうございました。
m(_ _)m