自力で掛衿かけえり汚れを解決編

ベンジン/リグロインえり拭き

一部の着物専門クリーニング店では今もベンジンで着物の衿にできた皮脂やファンデーションの筋状汚れ、袖口内側の皮脂汚れ、裾周辺のホコリ汚れ･黒ずみを解決しています。

ドラッグストアやホームセンターで気軽に入手できるベンジンや同じ効能を持つリグロインという薬剤でプロと同じ効果が得られるのです。

しかも ───。あくまでもベンジンとリグロインに限ってのお話ですが、ご自身で失敗しても当店で比較的安価にキレイに解決できます。21年6月にいただいた京都市N様のお言葉により情報をわかりやすく追加いたしました。安価に解決できるのはその他の溶剤や洗剤、水などを使わずベンジンかリグロインのどちらかでできた輪じみのみです。ベンジン・リグロイン処置を失敗した際はまずその旨お知らせ下さいませ。

慣れればお気に入りの靴下やブラウスを洗うくらい簡単でシンプルな処置です。火災につながらないよう配慮は必要ですが、やらない理由が見当たらないほどです。ぜひチャレンジしてみて下さい。

和裁 掛衿かけえり付け替え

ご相談いただく方の中でも和裁の経験がある方なら比較的ラクに行えるとご存知です。

時間がある方、と前置きはつくものの、掛衿かけえり付け替えはやっていくうちにどんどんキレイにできるようになるようです。

極端な意見かも、ですが、「和裁のやり方でなくてはいけない！」と考える必要がどれだけあるでしょう？

素人意見で恐縮ながら着物と同じ色の糸を探し出せれば並縫いでも適当縫いでも解決できれば・・・最大のメリットは汚れがなくなる事のはずです。

お金をかけずチャレンジし、仮に途中でどうしようもなくなれば当店へご相談下さい。、掛衿かけえり付け替え料金も安価です。

お客様からのお問い合わせとその結果実例

2021年初頭、コロナ感染症で緊急事態宣言の中、ご贔屓様からお問い合わせがあり、結果としてリグロイン衿拭き で自分で解決できた、というハッピーなお話がありました。そのやりとりの顛末に興味のある方は続きをご覧ください。

着物の着付け、日本舞踊・その他踊り、お花、お茶などの先生方や生徒さんの中には、ご自身でえり拭きして日頃の軽い汚れを解決している方は多いようです。

自力でのえり拭きを成功させるもっとも大切な事は早期処置です。「一刻も早い処置が成功への第一歩」と、着物専門クリーニング店の立場で断言します。

お召しになった後、すぐにベンジン・エリモト・リグロインなどで拭き洗いするのがコツです。このうちエリモトという溶剤は利用経験がないため、これ以降はベンジンかリグロインのどちらかを想定して記述いたします。

成功・失敗例が極端にあるようですので、処置前にはお知り合いやネット情報からご自身で習った上で処置しましょう。

ポイントは「ルールを守らないと火災に直結する」「換気性が良い場所を選ぶ」「ドライヤーとたくさんのタオル・バスタオルの準備」「ドライヤーは必ず『冷風』」、そして「死ぬほど強い力は不要」「一方向、決まった方向に向かって適度な力でコスる」などです。

お金に余裕があればえり拭きする机やテーブルの汚れを防ぐため、ホームセンターなどでプラパン・プラスティック系の板を購入してみるのもオススメです。

大きさは新聞紙の半分くらいのサイズが使いやすいと思います。小さくても大きくても使いにくい、これは実感したものの意見です。

プラスチックの机や板があれば汚れは簡単に拭き取れるのでプラパンは不要です。

コツや注意点がわかれば、その後のクリーニング料金の大幅カットという恩恵が待っています。節約したお金で「あぁ、確かセールで欲しかった色目の帯揚げが買えるなぁ」・・・。うれしいと感じませんか？

ごくたまに出向く百貨店の着物・小物売場のセール品・・・本当に後ろ髪を引かれますもの。(笑)

自分でえり汚れを処理できれば帯締めも帯留めも伊達締めもゾウリもカンザシも買え、時代劇の準主役風になれるのもすぐ目前です。

・・・そう目指すかどうかは置いておき、ムダな支出を減らして着物にそでを通す回数が増えれば着物の汚れを安くキレイにするかかりを自認する私どもにも恩恵・・・いえ、私どももお役に立てて関係した皆さまが幸せを味わえます。

個人的にはオススメとまでは申せませんが、自力処理を目指す方が増えタンスの肥やし状態の着物が街を闊歩かっぽするのは着物お手入れ係としては本望です。

やる気のある方は自己責任でがんばってみていただければと思います。

着物専門クリーニング店の
超有益情報

ここで着物専門クリーニング店だからこそ言える、覚えておいて損のない情報をご案内いたします。

その１）溶剤は使い切りましょう

１本を１度で使い切る位の気持ちで

これ、心理的にとても重要です。地域により上記薬剤の価格は違うかも、ですが我々着物専門クリーニング屋に出したら最低でも２～3千円です。各溶剤は１本千円以下！と、比較にならないくらい安く済みます。

「１本丸ごと使い切りましょう」と言っているのではありません。「１本丸ごと使い切るもんね～♬」という心がけが重要で、成功への第一歩とご案内しているです。

なぜなら正しく使用していればご自身で解決できたのに、と感じる失敗例が届くからです。

ベンジン等の薬剤をケチった結果、失敗したとします。

 ───なんのために大切な時間を使い、事前に色々研究して処置したのですか？

自分で掛衿かけえりの汚れを定期的に処置する・・・これのイコールは「費用を抑えるため」では？　それなら１本使ってもオッケーというくらい大胆に薬剤を使用するべきです。（あくまでも気持ち的にです）

本当に、本当にその方が失敗する確率が少なくできます。数百円をケチって数千円 ───これが最悪だと感じる方なら、ぜひ薬剤はふんだんに用意し、ドバドバ使いましょう。

ケチるよりも好結果が期待できます。これ、本当にそうなんです。

皆さんがドンドコドンドコベンジン等をたくさん消費しても私どもには何の得もありません。当然利益にも繋がりません。こればっかりは利害なくオススメですのでぜひドバドバ使用して下さい。

着物１点のえり拭きでベンジン類1本を使い切る覚悟で、と言っても、大半は半分も使い切れないと思います。

重要なのは「ドバドバ使うもんね～」との心がけなのです。

どれだけ使っても「もったいない」と思わず、必要だと感じたら必要なだけ使うのが上手にえり拭きをするコツのひとつです。

その2）失敗時のフォロー可能

失敗時はドライ洗い、ドライクリーニング、丸洗いで解決OK

上記の溶剤のみを使う限り、失敗しても着物専門クリーニング店や悉皆店しっかいてんで『丸洗いクリーニング』を注文すればだいたい解決できる事です。正確に言えばドライクリーニング用のドライ溶剤でサクッと洗うだけでだいたい解決できると思います。仕上げアイロンや前処理などを省き、ドライ洗いだけで注文できるよう現在丸洗いクリーニング改革進行中です・・・。

着物専門店であればあまりトラブルにならずに丸洗い（全体洗いはドライクリーニング処理）でベンジン等揮発性溶剤でできた輪じみはほぼなくなるという点です。

きちんとドライクリーニング処理を行っている店なら安いお店でも（おそらく）大丈夫だと思います。

失敗すれば着物専門クリーニング店で丸洗いにて解決。非常に有益な情報だと自画自賛しておる次第です。(^^

自分でえり拭きする利点のひとつに汚れの状態をひと目見て「ああ、これは落とせない」「これは落とせそう」と判断できる目が育つ点を上げられます。その後のクリーニングお見積り相談時に、実は非常に効果的に現れます。

えり拭きは水溶性汚れの成分がかなり混ざった汚れ（＝輪じみ、汚れのフチが際立った汚れ）や変色、または汚れ成分により染料が壊れて脱色などには効果ゼロです。るような場合はご自身での処置はむずかしいものがあります。

またベンジン・リグロイン洗いの際、ネット情報や知人情報を信じてその他の薬剤や洗剤、そして水などを使ってしまった際の失敗は丸洗い・ドライ洗い・ドライクリーニングでは解決できなくなります。

ヒドい状態にしないためにもご家庭でのえり拭きはベンジンならベンジンだけ、リグロインならリグロインだけで処置するようにして下さい。これ、地味ですが本当に超有益情報です。

ベンジン･リグロイン洗いに失敗した際、どうしても再びそでを通せるようにしたいお着物はぜひ当店を含めて数軒以上の着物専門クリーニング店にご相談ください。そう、相見積もりです。当店は大歓迎です。

当店では着物のえりだけベンジンよりも強力な洗浄力を持つ専用溶剤で洗い、●えり洗い：1,700円●でご利用いただけます。丸洗いは裏地のないタイプで3,200円より承ります。

複数のお店に相見積あいみつもりで相談するのは着物のトラブル解決の最初の一歩、定番とも言えます。そして相見積あいみつもりはお店にとってプレッシャーとなり、サービス向上やお客様寄りの店が増えるキッカケにもなります。ぜひご活用下さい。

もし当店にご相談いただく際は正確なお見積りをご案内できるよう、ご自身で処置した場合は溶剤名といつ頃処置したかを合せてお知らせくださるようご協力をお願いいたします。

かけえり付け替えの目的はズバリ、汚れを見えなくする事です。

そのために一旦かけえりを外し、自分で洗った後に取り付ける ───。

かけえり付け替え･取っ払いのうち、取っ払う→洗う→かけえりを取り外して縫い付けるのは、時間をかければ皆様ご自身での処置が可能です。かけえりのない着物は現代では少数派ですが、地衿だけでお召しになれるという伝統をご存じない方が多いためだと考えられます。地衿だけでも決して「恥ずかしい状態」ではありません。かけえりを取っ払う事は地えりでの着こなしとなります。あらかじめご了承の上読み進めてください。

「かけえりだけにしてどうやって洗うの？」→ベンジン・リグロインでえり拭きするか、それで落ちなければ洗剤と水でチョチョッと洗えば良し、です。

面倒だったり溶剤を買う費用を抑えたい場合は洗剤と水だけでも十分ベンジン・リグロイン同様以上の効果を発揮しまる。軽い皮脂汚れやファンデーション汚れ、できて日の浅いその他の汚れは落とせます。水は本当に最強の洗浄素材なのです。濃い色の生地の場合は色が薄くなるケースも考えられるため様子を見ながら処置しましょう。水はその意味ではリスクが大きい洗浄素材でもあります。

変色していたり色が抜けている場合などは洗っても効果は得られません。

その先は自力で変色処理や部分染めをするかかけえりをあきらめるか、当店のような着物専門店に依頼していただければうしし・・・いいえ、持てる力を総動員して発揮し、ご期待に沿いたいと考えています。

着物は和裁で縫わないと・・・。このページの冒頭でもご案内しましたがそんな心配は和裁でお直しをしなければならない着物だけで良いのではないでしょうか。

小紋や付下げ、つむぎなど多くの普段着で、ご自身が気にしなければ適当縫いで十分だ、というのが当店の立場です。着物をお召しになる機会が増えるのが当店にとっては利益につながる・・・これは確かに否定できません。ただこのページは本当にクリーニング代節約を主眼としています。

着物を和裁で縫い上げるのは確かに伝統的です。ただその伝統通りの縫い上げ方を「見て見抜ける方」がどれだけいるのかをを考えれば・・・和裁にこだわらなくても良いのでは？と考えている次第です。

大切なのはかけえりがキチンと取り付けてある事・・・もっと言えばお召しの際「普通の着物を着ている『ように見えれば良し』というのが当店の独特な立場です。

「それを言っちゃあオシマイよ」な意見として、かけえりは別になくても構わないという着物の伝統の中の考え方もあるほどです。

地えりだけで着ても良し、適当縫いのかけえりでも良し、では？という意見です。

和裁士さんによればそで付けや見頃の縫い付けと比べ、かけえりの縫い付けは非常にシンプルで簡単と言えるそうです。

最近は便利になったもので、和裁で用いる「縫い目の糸切り・縫い糸切り・糸切りリッパー」などの名称でが百円均一ショップなどでも気軽に入手できるようになりました。

近くに百均がなくても定価でも千円でお釣りがくるプロ用が買えるはずです。

ただし普段針と糸で何かしら行わない方にとっては、着物へのハサミは非常に危険でオススメできません。

そこでオススメは『糸切りリッパー』です。（シームリッパー、N リッパーなども同じ用途です）

糸切りリッパーは不審者を取り押さえる際に用いる『さすまた』に似た形の小さな縫い糸切り専用製品です。

非常に効率的に縫い糸だけを切り進められます。ご自身でＤＩＹチャレンジされる方はぜひ「縫い目の糸切り・縫い糸切り・糸切りリッパー」を入手して行ってくださいますようお願いいたします。

自力掛衿かけえり付け替え超重要注意点

注意点！です。　元のお仕立てでかけえりを地衿と一緒に縫い上げている事例が時々見られます。

この例はかけえりだけを外そうと意図を切っていたら、地衿も見頃（着物本体部）から外れてしまった！事件で、とってもトホホな結果になりかねません。

そこでオススメのやり方をご案内します。いずれ自力でえりのお手入れをしよう、取り外して取り付けようとお考えになる着物を一度かけえり付け替えに出してみるのです。

その際、注文時に「次回以降は和裁のかけえり付け替えにチャレンジしたいので」と伝えます。

そうする事でもしかけえりが地衿とともに１本の縫い糸で縫い上げられていた着物でも、お店で地衿は地衿として縫い上げ、その上にかけえりを付け直してもらう事ができます。

確かに１度はムダに感じる費用がかかってしまいます。しかし超オキニの着物であれば、長い目で見れば良い策になりうるご利用法だと思います。

自力での掛衿付け替えは、あくまでも自己責任にて行って下さい。