着物をたとう紙に包んで保管
コレが着物を地獄に落とす!

着物はたとう紙に包んで保管する
伝説は情報が不足していた

突然ですが着物になったつもりで想像してみて下さい。

真夏の暑い盛りに家のドア・窓を全て閉めた状態でエアコンが効いていないクローゼットがある部屋に入り、パーカーとスエットを着てからクローゼットの中で休憩するとします。

・・・結果は言うまでもありません。非常に暑苦しく、汗ダラダラ、超不快・・・。5分もそこにいられない事でしょう。

この例でのクローゼットは桐たんすで、パーカーとスエットはたとう紙を指しています。

表現したかったのは四季のある日本も最近の

昔々の家は通気性がガバガバに良く、虫もたくさん入ってくるため特に絹の高級品である着物を守るために桐たんすにカッチリしまう・収納するという文化が生まれました。

通気性が悪い紙で作られたたとう紙に包んで着物を保管する、というのが着物にとってどれだけ劣悪な環境であるか、ご理解いただける事でしょう。

今たとう紙として皆様が着物保管時に使用している一見和紙のような紙で作られたたとう紙は、実はダウンジャケットの表地に使われる通気性がほぼ無い素材でできたような品、と表現できます。

ダウンジャケットの表地は通気性が非常に悪いため、汗も逃してくれず空気の入れ替えも難しい状況になります。

通気性が悪いという事は空気中にたっぷり含まれているカビの胞子もずっとそこに存在したままです。

通気性が悪いのは冬は良いかもしれません。寒さを一定しのげるでしょう。ところが夏はいかがですか?

「100%和紙でできたたとう紙で」

着物・呉服関係のお店で店員さんが親切に言ってくださる着物の保管法の基本トークのうち、現代においてはもっとも伝えなければならない重要なキーワードが抜け落ちています。

それは「着物は和紙だけで作られた通気性がしっかりあるたとう紙に包んで保管するんですよ」です。

重要なのは和紙だけで作られたたとう紙という点です。

つまり皆様のためと思い、店員さんがかける「着物はたとう紙に包んで長期保存するのが良いです」には、『和紙製のたとう紙を用いて』という一言が抜け落ちています。

これはおそらく今日このページをご覧になった日も、どこかで誰かがそう教えられているのが実際のところです。

簡単に説明すると昔は通気性が最高のお家が普通でした。どこの家でも現代住宅に比べると非常に風通りが良く、何もしなくても空気の入れ替えを勝手にしてくれていたのです。

その環境の下、大切な絹の着物を虫食いなどから守るため考えられたのが桐たんすに和紙製たとう紙に包んで保管する・・・というものだったのでしょう。 当時は今数百円程度で購入できる安いたとう紙は存在せず、たとう紙・文庫紙と言えば全て100%和紙製のたとう紙だったのです。

今ネットや呉服店で簡単に購入できる1枚数百円~千円程度の非常に安価なたとう紙には全て洋紙の原料がコストダウンのために練り込まれ、安い割に和紙製の品に比べて非常に通気性が悪くなっています。

 

手漉きてす和紙やと手漉きてす和紙と遜色ない通気性を持つ機械漉ききかいす和紙製たとう紙を用いた長期保存 ───

安い『たとう紙風包み紙』と比べて1枚当り千円高くついたとしても、仮に5年使用するなら1年200円です。これくらいの投資で通気性が保て湿度もある程度吸収してくれる事が期待できるのなら、安い? ───高い? ───いかがでしょう?

保管時に必要?

長期保管時にたとう紙が必要かどうか?と問われれば当店では「・・・」と、答えに窮してしまいます。

着物を愉しむという点では「昔ながらの取り扱い方法・保管方法を楽しむ」のはアリだと感じます。

着物に詳しい熱烈なファンの方でもたとう紙のなんたるかを理解されている方は多くありません。

前述のように着物などを購入時に店員さんから「たとう紙に包んで保管がいいですよ」とのトークをまるごと信じて『たとう紙風包み紙』で長期保存している方もたくさんいらっしゃいます。

その流れで当店ですら「クリーニングでたとう紙はもらえますか?」とのお問い合わせがとても多い実情を考えれば・・・。

『本物たとう紙の取り扱いが必要だ』と考えているところです。

※当店は着物専門クリーニング店で着物クリーニングのプロです。

着物を着る事、着物の帯や小物の組み合わせ、季節や柄の合わせ方、そして長期保管の術のプロではありません。
たとう紙の必要性はあくまで着物クリーニングをする者としての考え方です。通気性が悪い『たとう紙風包み紙』に長年包まれた事が大きく影響して『変色黄変トラブル』を引き起こしている現状を日々、目の当たりにした結果から生まれた捉え方です。

この点ご理解いただければ幸いです。

たとう紙の種類/価格/原材料/用途
製法 手漉きてす 機械漉ききかいすき
種類 和紙製たとう紙 和紙製たとう紙 たとう紙
価格 高価 ほどほど 格安
単価 ??? 数百円~ 百円~
伝統 日本の伝統的たとう紙 伝統を受け継いでいると言える製品 伝統的とは言えない製品
原料 三大原料のこうぞ三椏みつまた雁皮がんぴなどを手漉きてすという昔ながらの伝統手造り技法で作られたもの 三大原料のこうぞ三椏みつまた雁皮がんぴなどでを機械漉ききかいすきで効率よく作られたもの 左記3大原料以外に、安価にするため通気性に劣る原材料を多分に含んだもの
通気性 ○~✕
長期保管 最適 適切 不適切

「古くから続く日本古来の伝統にのっとった保存がしたい!」とお考えなら、美濃や黒谷など有名どころの手漉きてすき和紙で着物を包んで保管すると数百年前の人々と同じ保管スタイルとなり、満足感が高いのではないでしょうか。

機械漉ききかいすき和紙製のたとう紙でもこだわりを持って制作されている商品なら通気性は手漉きてすき和紙と同じような品質を保っているものもある事でしょう。

ただし「機械漉き和紙」には商品性・通気性・価格に大きなバラつきがあります。目的に応じたたとう紙をご利用される事が肝心です。

たとう紙の種類と通気性

当店が過去調査した結果としては、こうぞ三椏みつまた雁皮がんぴなどの昔から着物の包み紙に用いられた原材料だけで作られたたとう紙と、昔日本になかった西洋紙の原材料(パルプなど)を混ぜたもの、レーヨン(人絹)など化学繊維を混ぜたものなどでは明らかに通気性に差があるようです。

正確は検証を行っていないため、有益情報として発信できる内容としては以上となります。

たとう紙を区別する

独断ではこうぞ三椏みつまた雁皮がんぴなど3大原料だけを用い『手漉きてすき/機械漉きすき工法』で作った和紙で作られたたとう紙以外、『たとう紙』として販売するのはいかがなものか?と感じる次第です。

当店では今後、着物の長期保存に適した『昔ながらの3大原料だけを用い手漉きてすき/機械漉きすき工法で作られた』たとう紙を『本物たとう紙』、『3大原料以外の原材料で作られた機械漉きすき工法で作られた』たとう紙の形をした着物用包み紙を『たとう紙風包み紙』と区別して発信してまいります。※このページでご案内の180円たとう紙は『たとう紙風包み紙』です。

手漉きてす和紙製たとう紙もインターネットの普及で1枚当り数百円くらいから買えるようになっているようですが、多くの販売業者様が扱う1枚100円~200円程度で購入できるのは『たとう紙風包み紙』です。

用途で使い分ける

安く購入できる『たとう紙風包み紙』にも役割があります。用途を割り切れば「良い商品だ」と言えるでしょう。ポイントは「用途」です。

お家から着付け先への運搬時に、結婚式のためにホテルで一時保管時、陰干し後すぐに収納できないときのホコリよけ、きちんと収納するまで数ヶ月の仮収納時などで用いる際、1枚千円程度の『本物たとう紙』を使うのは「少し・・・もったいないかも」と感じます。

そんな時は『たとう紙風包み紙』は大活躍です。なにせ1枚100円~200円で簡単に購入できる商品ですので、忘れても汚れてしまってもなくなっても痛手はわずかで済みます。

またおそらく数日~数ヶ月程度なら、通気性が悪い安い『たとう紙風包み紙』でも変色が進む事は考えにくいものです。

白カビ・黒カビの発生を促進させる可能性はありますが、これは着物を包む紙ではなく「着物を置く環境」が原因です。これは湿気の少ないところに置くという防カビ対策を徹底すれば起こり得ないトラブルです。

『本物たとう紙』と『たとう紙風包み紙』の作りや通気性・用途を理解し、特に長期保存時にたとう紙を用いたいと希望のある方は着物のために最適な環境を作ってあげていただければと願う次第です。

本物たとう紙はコスト高?

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